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領域概要

科研費

領域概要

領域代表挨拶

私たちの脳のはたらきは生後発達期の経験に大きく影響されます。それは、脳機能の基盤をなす神経回路が、生後発達期の特定の時期に外界からの刺激の影響を受けて、再編成されるためです。このような神経回路の可塑性が高い特定の時期を「臨界期(critical period)」と呼びます。臨界期の経験が神経回路に刻み込まれ、一方、神経回路の可塑性は臨界期が過ぎると著しく低下するために、臨界期の影響は一生涯残ります。例えば、視覚野の臨界期に片目の視覚を剥奪するとその目は弱視になってしまいます。そこで、一旦終了した臨界期を大人の脳で再開することができれば、失われた神経機能の回復や新たな脳機能の獲得を促進することが期待できます。実際、近年の研究により、臨界期の時期を早めたり遅らせたりすることや、成熟動物において臨界期を再開できる可能性が示されています。また、脳傷害の後の一定期間、神経回路の可塑性が上昇して機能回復が起きやすい、一種の臨界期が生ずることが知られています。これらを踏まえて、本研究領域では、臨界期を生涯にわたって生じ得る「神経回路の再編成と可塑性が亢進する時期」と捉え直しました。領域の研究者の緊密な協力と切磋琢磨によって脳と心の発達の理解を格段に深め、究極の目標である、生涯にわたる可塑性誘導(iPlasticity)による「脳の若返り」への端緒を得るために尽力いたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。

領域代表
狩野 方伸
帝京大学・先端総合研究機構・特任教授

領域概要

生後の限られた時期の経験が特定の脳機能の発達や獲得に重大な影響を及ぼします。この時期を臨界期と呼びますが、その基盤には神経回路の再編成があります。最近、成熟動物において臨界期を再開できる可能性が示されています。一方、脳傷害の後の一定期間、神経回路の可塑性が上昇して機能回復が起きやすい、一種の臨界期が生ずることが知られています。本研究領域では、臨界期を、生涯にわたって生じ得る「神経回路の再編成と可塑性が亢進する限られた時期」と捉え直しました。様々なアプローチで神経回路の可塑性と操作、脳の機能発達、脳傷害からの回復などを追求するトップレベルの研究者を集結し、臨界期のメカニズムを解明して、脳と心の発達と機能回復の理解を深め、生命科学に学術変革をもたらします。


図 臨界期とその操作・再開
ブレーキ因子であるLynx1のノックアウトマウスは、成熟しても臨界期が終了せず、可塑性が高いままである (Morishita et al., Science 2011)

お問い合わせ先

帝京大学・先端総合研究機構・特任教授
狩野 方伸(領域代表・事務局)

工学院大学 先進工学部
金丸 隆志(広報)

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